以前、ラーメンチェーン店の「野菜たっぷり麺」のテレビCMで、出演者が、
「私が好きな”の”は・・・・・」
と言う場面がありましたが、この表現が、英語の『強調構文』に対応しています。
「私は、~ が好きです」という平坦な表現の文の中で、
”~” を強調したい場合は、
「私が好きな」という情報を”の”に付けて、
「私が好きな”の”」 = ”~” というイコールの関係を用いて、
”~” の部分が強調されます。
ただ、この”の”そのものには、中身がありません。
しかし、”の”が無ければ、「私が好きな」という情報をくっ付ける対象がありません。
”の”は、大気中の水分をくっ付けて雨粒を作る核になる、塵のようなものです。
この”の”が、英語の『強調構文』の "It" に当ります。
Afghanistan に、 Buzkashi(ブズカシ)という、大勢の騎手(Chapandaz チャパンダーズ)が、一斉に馬で駆けながら羊の毛皮を奪い合う競技があり、他の騎手から強引な手段で毛皮を奪ったり、揉み合いの中で落馬する騎手もいるほどの、荒々しいものですが、
このBuzkashi をテーマにした映画 "The Horsemen"(「ホースメン」)に、茶店で、老人が、周囲の人々に、昔見たBuzkashi の名騎手について語る場面があり、そのセリフが、
"It was there that I saw the finest chapandaz who ever lived." というもので、
「わしが、これまでに生きた最も優れたチャパンダーズを見たのは、まさにそこだった」
このセリフは、
It was there / that I saw the finest chapandaz who ever lived.
のように区切って語られ、
前半の "It was there" は、一気に言い、
一息おいて、
後半の
”that I saw the finest chapandaz who ever lived”
の部分を、老人は、感嘆のあまりに頭を振りながら、歌い上げるように喋るのです。
つまり、文全体は、
"It was there" と "that I saw the finest chapandaz who ever lived" のように二分されていて、
"that・・・・" の部分は、there を強調するための情報になっています。
また、この情報の部分が、話者が自分なりの思い・熱意・感情を込めて語りたい部分です。
前半の "It was there" は、その情報を盛り込むためのフレームですから、アッサリと語られます。
元の、
I saw the finest chapandaz who ever lived there.
「わしは、そこで、これまでに生きた最も優れたチャパンダーズを見た」
という平坦な文のうちの
"there" を際立たせるために、
"I saw the finest chapandaz who ever lived" という情報を用いるのですが、
この情報をくっ付ける相手が "it" で、"It" そのものには中身がありませんが、
"It" が無ければ、(that を用いて)情報をくっ付けて、情報を強調の手段として用いることが出来ません。
It ( that I saw the finest chapandaz who ever lived ) was there.
S V C
という、「・・・の情報の持つ”の”は、C である」という構造になっています。
( ”that I saw the finest chapandaz who ever lived” が 、It に付いて説明するので、
"that I ・・・・・" は『形容詞節』、that は『関係詞』ということになります。 )
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