2025年8月13日水曜日

「私が好きな”の”は、~です」は、日本語の『強調構文』

 以前、ラーメンチェーン店の「野菜たっぷり麺」のテレビCMで、出演者が、

「私が好きな”の”は・・・・・」

と言う場面がありましたが、この表現が、英語の『強調構文』に対応しています。


 「私は、~ が好きです」という平坦な表現の文の中で、

”~” を強調したい場合は、

「私が好きな」という情報を”の”に付けて、

「私が好きな”の”」 = ”~”     というイコールの関係を用いて、 

”~” の部分が強調されます。


 ただ、この”の”そのものには、中身がありません。

しかし、”の”が無ければ、「私が好きな」という情報をくっ付ける対象がありません。

”の”は、大気中の水分をくっ付けて雨粒を作る核になる、塵のようなものです。


 この”の”が、英語の『強調構文』の "It" に当ります。

Afghanistan に、 Buzkashi(ブズカシ)という、大勢の騎手(Chapandaz チャパンダーズ)が、一斉に馬で駆けながら羊の毛皮を奪い合う競技があり、他の騎手から強引な手段で毛皮を奪ったり、揉み合いの中で落馬する騎手もいるほどの、荒々しいものですが、

このBuzkashi をテーマにした映画 "The Horsemen"(「ホースメン」)に、茶店で、老人が、周囲の人々に、昔見たBuzkashi の名騎手について語る場面があり、そのセリフが、


"It was there that I saw the finest chapandaz who ever lived."   というもので、

「わしが、これまでに生きた最も優れたチャパンダーズを見たのは、まさにそこだった」


このセリフは、

It was there  /  that I saw the finest chapandaz who ever lived.

のように区切って語られ、


前半の "It was there" は、一気に言い、

一息おいて、

後半の

”that I saw the finest chapandaz who ever lived”

の部分を、老人は、感嘆のあまりに頭を振りながら、歌い上げるように喋るのです。


 つまり、文全体は、

"It was there"  と  "that I saw the finest chapandaz who ever lived" のように二分されていて、

"that・・・・" の部分は、there を強調するための情報になっています。

また、この情報の部分が、話者が自分なりの思い・熱意・感情を込めて語りたい部分です。


 前半の "It was there" は、その情報を盛り込むためのフレームですから、アッサリと語られます。


 元の、

I saw the finest chapandaz who ever lived there. 

「わしは、そこで、これまでに生きた最も優れたチャパンダーズを見た」


という平坦な文のうちの

"there" を際立たせるために、

"I saw the finest chapandaz who ever lived" という情報を用いるのですが、

この情報をくっ付ける相手が "it" で、"It" そのものには中身がありませんが、

"It" が無ければ、(that を用いて)情報をくっ付けて、情報を強調の手段として用いることが出来ません。


It ( that I saw the finest chapandaz who ever lived )   was   there.

S                                                                                                            V          C


という、「・・・の情報の持つ”の”は、C である」という構造になっています。


( ”that I saw the finest chapandaz who ever lived” が 、It に付いて説明するので、

"that I ・・・・・" は『形容詞節』、that は『関係詞』ということになります。 )


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