2016年5月7日土曜日

西欧中世のカオス的世界(6)

"LIFE AND WORK IN MEDIEVAL EUROPE"    P. BOISSONNADE
                                                                                        (p 4)

Division of labour had begun.   The small urban industry of the workshops had grown up and prospered, side by side with the old domestic industry, which it outshone, and the new capitalistic industry, which was just beginning to emerge.
Finally, the activity of trade maintained itself on the very eve of the invasions, and  was promoted by the appearance of more elaborate commercial institutions, the  development of instruments of credit and of river transport, the construction of a magnificent network of over 90,000 miles of roads, and the building of great ports.   "Every day the world grows more cultivated and more wealthy," wrote an enemy of Roman society.   "Everywhere there is commerce, everywhere towns."  
 
様々なかたちの仕事が現れていた。工房を仕事の場とする小規模な都市の工業が成長して栄えており、それは昔からの家内工業と並行しながらもそれを凌ぐようになり、ちょうど姿を現しつつあった新しい資本主義的な産業とも共存した。最終的には、交易活動は異民族の侵入前夜には成立しており、より整った商業制度、信用貸しのような取引手段と河川を使った輸送の発展、九万マイルを超える壮大なネットワークの道路、大規模な港湾の建設によって、後押しされた。『日々、世界はより文明化し、より豊かになる』と、或るローマ社会の敵は書いている。『あらゆるところに商売があり、あらゆるところに都市がある』


日本では、西欧の近代に対応する江戸時代に、西欧と違って乗用の馬車が発達しなかったため、後の自動車製造の基礎になる、シャシーやショック・アブソーバーの技術も発達せず、道も主に歩くためのもので、舗装された道路も現れませんでした。◯◯街道と呼ばれる江戸時代からの幹線道路も、舗装されたのは、戦後の高度成長が本格化してからで、前回の東京オリンピック(1964)が近くなってからではなかったでしょうか。
 それを考えると、ローマ帝国の道路網は、信じられないほどに隔絶しています。ホンダが、かつてF1レースに参戦して連戦連勝した時も、エンジンの性能はヨーロッパのメーカーを圧倒したのに、シャシーは、ドライバーが納得するレベルの操縦性をなかなか達成できずに苦労した、と言われるのも、そもそも道路の歴史が違い過ぎるからでしょう。なにしろ、東海道の国道1号線でさえ、戦後も長く舗装されず、当時珍しかった外国製の大型バイクのライダーが数珠つなぎのダンプ10台をごぼう抜きにするという無茶をしたのも、土埃がひどくて息が出来ないのでそうせざるを得なかった、と本人が書いているくらいですから。
 明治以降も、人を乗せるために現れたのは鉄道馬車で、道路よりも鉄道の整備が優先されたましたが、塞翁が馬というか、現在では、東京や大阪は、鉄道を乗り換えてゆけばほぼ行きたいところへ行ける、というほどに、線路のネットワークが充実していて(a magnificent network)、自動車を持たなくても困らない街になり、ヨーロッパやその分家(米、豪など)の歴史的な道路先進国の大都市が、交通手段を自動車に頼り過ぎたために慢性的な交通渋滞で二進も三進もいかなくなっているのと、対照をなしています。


ところで、『まぐまぐ』様をとおして、『英語はこうできている』という題のメルマガを発行しています。
現在形、過去形、分詞、不定詞などの基本的な『部品』が、どのようなものなのか、ということや、仮定法や条件の背後にある発想はなにか、というような、中学、高校で触れる基本的な事項がはっきりすれば、英文は分析できる、ということで、目下、
"Under a Crimson Sun"(David S. Stevenson)を扱っていますが、題名通り、赤色矮星(質量が小さいために核融合反応がおだやかで、恒星としては暗いが、その分、きわめて長寿命の星)を回る惑星における生命発生の可能性、という興味深い内容です。