2016年7月27日水曜日

西欧中世のカオス的世界(7)  

Life and  Work in Medieval Europe   P. Boissonnade    (p 4, 5) より


What did the empire, then, lack to enable it to resist the new attack of the
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barbarians?


Only a government less hidebound by the rigid forms of a slow bureaucracy ;

only a ruling class more conscious of its duty and of its social mission ;

only military institutions less permeated by the use of mercenary troops ;

only a public spirit less inert, less vitiated by political indifference and by personal
degradation.


Other societies have experienced similar miseries, and have escaped death by
fundamental reforms.

The empire could not, or would not, make them, and it yielded place to the barbarians.

But the civilization which it had created left sufficient trace behind to enable   
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Europe to escape from a permanent barbarism.

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ローマ帝国が周辺の蛮族の圧迫に対応するうえで足かせになったもの。

* 敏速に動けない硬直した官僚機構によって機能不全になった政府
* 自らの義務と社会的使命を忘れた支配層
* 多くの傭兵によって支えられた軍事制度 
* 政治的無関心と個人の堕落によってもたらされた人々の無気力

他の社会は、同じような社会の落ち込みを経験しても、根本的な改革によって、滅亡を免れた。

ローマ帝国は、根本的な改革ができず、する意志も無く、蛮族に国を明け渡した。

が、ローマ帝国が創り上げた文明は、十分な遺産を残し、それによってヨーロッパはその後は破壊をこうむらずに済んだ。 


 この本が出版され(1927年)て90年ほど経過しましたが、大航海時代以来、世界を支配したヨーロッパが、その間におこなった周辺部の収奪によって、周囲の貧困化を
招き(たとえば、エボラ出血熱は、栄誉点滴によって体力を維持すれば時間の経過と共に抵抗力が生まれて治癒する可能性があるのに、薬に比べれば遥かに安価な点滴すらできないほど、西アフリカは貧しい)、経済と治安が崩壊した周辺部からヨーロッパへの人の流れが発生して、ヨーロッパ社会がイスラム的要素を受け入れて変質するか、あくまで変質を拒否して壊滅するかの分岐点に立たされるとは、当時は著者も想像だにしなかったと思われます。


 『英語はこうできている』というメルマガを、『まぐまぐ』様を通して発行しています(発行人 横山 靖城 よこやま やすむら /月3回、 600円)。
ILC(国際リニアコライダー)をはじめとする国際的な最先端の研究を通して、日本人が人類の未来を明るい方向へ持って行くことに大きく関わっていきそうな情勢ですが、そのためのコミュニケーション・ツールとしての英語の教育は、従来はひたすら暗記を求めるばかりで、とくに、原理・法則によって混沌のなかに筋道を見出そうとする理系の人にとっては、苦痛に感じられることもあるかと思われますが、英語の根本にある発想や組み立てに光を当て、英語とはこういうものだったかと納得することによって、無理をせずに吸収できるようにしたいと思います。

たとえば、『仮定法過去、仮定法過去完了』は、『過去にさかのぼって新たな動きをすることはできない』ことから、動詞・助動詞の『過去形』を用いて『不可能(あるいは、可
能性が低い)』というニュアンスを表現するもので、『仮定法過去完了』も、助動詞に『過去形』"had" を用いるのがポイントで、発想そのものは『仮定法過去』 も『仮定法過去完了』も同じです(というよりも、『仮定法過去完了』は『仮定法過去』の発展型と言えます)。

『不可能、あるいは、可能性が低い』ニュアンスを表す『(カタチのうえでの)過去形』は、過去における動きを表す『(ホンモノの)過去形』とはちがって、現実の世界における動きではなく、使う人の頭の中にある『仮定の世界』における動きを表します。

 『仮定の世界』にも、『現在』、『過去』があり、したがって、動詞・助動詞には『現在形』、『過去形』がありますが、その『現在形』、『過去形』は、ともに『過去形』です。

 したがって、『仮定法では、「時制の一致」が起こらない』という不思議な現象がありますが、起こらないのではなく、起こっているのですが、『仮定の世界』においては『現在形』も『過去形』もおなじカタチなので、起こっているように見えないのです。

というのが、根本の発想から見た『仮定法』です。